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今後の展覧会

2025年524日(土)~68日(日)
水・木曜日休廊
13:0019:00
最終日は17:00まで

「Bloom Bloom Bloom」        

子どもの頃から花が咲いているのを眺めるのが好きだった。嬉しかった日も、悲しかった日も、嫌なことがあった日もどんな時でもいつも彼らは私の近くにいた。特に何をしてくれるわけではないけれど、ただそこにいるだけでいい。植物は私にとってずっと癒しの存在であり続けている。

2008年に出産した子どもには重度の障害があった。彼のケアに追われ息苦しさを抱えながら暮らしていた時も、彼の障害が受け入れられず沸々としていた時も植物はいつも私を癒してくれた。庭に植物を植え育て始めたのは、障害のある息子のケアで外出もままならない生活でも、身近に彼らの存在を感じたかったからだ。私たちがどんな状況にあっても我関せずと季節は当たり前に巡り、植物はその時々の姿を見せてくれる。植物を眺めるために庭に出るとそこには鳥の囀り、道ゆく人々の声、子どもたちの走る足音、飛行機の飛ぶ音、陽の光、暖かい空気などを感じることができた。自宅にこもって単調な介護生活を送っていても今日も世の中は動いていて、その中で私も生きていると実感することができた。時が経ち、子どもの体調も安定し外出ができるようになると、車椅子を押し道端に咲く様々な植物を息子と一緒に眺めることが増えた。植物の成長や変化に気付いた時、彼とまた一年を共に生きることができたと私は喜びを感じ、また次の一年も共に生きようという欲が湧く。

息子も植物と同じように言葉を持たない。彼は寝たきりで自発的に何かをすることは難しい。それでも彼が微笑むと私は満たされた気持ちになる。涙を流して全身で怒りを露わにする姿に癒されてしまう。いつからか彼に対して、私はただ純粋に「そのままでいい」と思うようになった。彼もまたただそこにいるだけで、私にとっては大きな癒しだ。そんな思いから植物と障害のある人たちを組み合わせたら、そこには癒しの花園が広がっているのではないかと考えこの作品の制作を始めた。

日々、慌ただしく生きていると気づかないまま通り過ぎてしまいそうになるけれど、道端には無数の植物が生息し、四季折々の風景を楽しませてくれている。そして、障害のある人たちも様々な表情を見せながらあなたの身近に生きている。

山本美里